別の記事でUSBの空き端子のノイズ対策としてUSBターミネーターの効果を検証しましたが、最近のオーディオ機器はネットワーク接続できるLAN接続端子が付いているものが多いです。
ケーブルを接続していない空きLAN端子は、USBの空き端子と同様にノイズを放出したり、他の機器からのノイズの影響を受けたりして、オーディオ機器の再生音質に悪い影響があります。
今回は、空きLAN端子のノイズ対策用として市販されているLANターミネーターを購入して効果を確認してみましたので、紹介します。
LAN関係のノイズ対策方法
LAN関係のノイズ対策方法としては、大きく分けて以下の2種類があります。
・LANケーブルを通して伝わるノイズを遮断するLANアイソレーター
・空きLAN端子のノイズを減衰させるLANターミネーター
今回は空いているLAN端子のノイズ対策として市販のLANターミネーターの効果を検証してみることにしました。
ちなみに、LAN接続としては、有線以外に無線LAN(Wi-Fi)接続もありますが、Wi-Fiは通信が途切れたりすることが結構あるので、私は楽曲再生信号の伝送用としてはWi-Fiは使っていません。
LANターミネーターを選定
LANターミネーターとしてはアコースティックリバイブのRLT1 、JS PC AudioのNLT2が市販されています。
RLT1が14,860円(税込)なのに対して、NLT2は9,350円(税込)ですので、LANターミネーターを多数使用する可能性も考慮してNLT2を購入して試してみることにしました。
LANターミネーター:NLT2
空いているLANポートをNLT2で塞ぐことで、外部からのノイズや電磁波の侵入を防ぎ、LANポートで発生するノイズを抑えることができます。
LANターミネーターをルーターの空きLAN端子で試す
LANターミネーターNLT2を以下の条件でテストしてみました。
・ルーターの空きLAN端子に挿入
・CDからリッピングしたFLAC(44.1kHz,16bit)ファイルを再生
・ネットワークトランスポートsMS-200にはUSBターミネーターを接続済み
NLT2をルーターの空きLAN端子に挿して音質改善効果を確認してみました。
ルーター(バッファロー A-B218)のLANポートは4つあり、2つは接続されていて、空きポートが2つあります。
NLT2を挿さないとき、NLT2を1個だけ挿したとき、NLT2を2個挿したとき、について比較試聴してみました。
ネットワークトランスポートsMS-200の空きUSB端子にはUSBターミネーターを接続してノイズ対策した状態で行います。
【試聴用音源】
試聴用の音源としては、CDからリッピングしたFLACファイルをいろいろ用います。
すでにUSB空き端子はUSBターミネーターでノイズ対策した状態ですので、細かい音質変化を聞き取りやすいオーケストラ録音の中から、普段からよく聴いている曲を中心に試聴していくことにしました。
【試聴のポイント】
・弦楽器の各パート(バイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバス)の分離具合が明瞭か?
・バイオリンの弱奏時の音の滑らかさ、柔らかさが自然に聞こえるか?
・弦楽器が大勢で弾いているときのリアルさや生々しさが出ているか?
・音量を上げていったときに、バイオリンの音にメタリックな付帯音が付かないか?
・管楽器や打楽器などのソロの周囲のホール空間の響きが良く聞き取れるか?
【視聴結果】
(1)NLT2を挿さない状態での試聴
LANターミネーターをルーターに接続していない状態でも、そこそこ良い音で鳴っていますが、音量を上げていくとバイオリンの音がやや金属っぽくなって、少しうるさく感じられます。
オーケストラの全合奏では、少し音が濁ったような感じで、スカッと抜けきらないようなところも感じられます。
(2)NLT2を1個挿した状態での試聴
LANターミネーターをルーターに1個接続した状態では、曲が始まる直前の静けさが良く感じられるようになりました。
各楽器の音の分離も良くなって、ハープなどの小さい音もよく聞こえるようになってきました。
音量を上げていったときの、バイオリンの金属的な付帯音が減って、やかましい感じがかなり減ってきたようです。
明らかに良い方向に音が変化していると感じられるようになったので、さらに欲を出してLANターミネーターをもう1個追加して試してみました。
(3)NLT2を2個挿した状態での試聴
LANターミネーターを1個から2個に増やしただけですが、こちらの方がかなり良い音に聞こえましたので、いろいろなオーケストラ曲を試聴してみることにしました。
オットー・クレンペラー指揮フィルハーモニア・オーケストラでヨハン・シュトラウスの「こうもり」序曲を聴いてみました。
まず、弦楽器の各セクションの分離がはっきりとして、楽器の位置関係が左右だけでなく前後関係も見えるような感じがします。
バイオリンの音が滑らかになり、艶が一層増えたように感じられます。
また、バイオリンが弱音で弾くところでは音に何とも言えない柔らかさが感じられるようになり、本当はこんな良い音で鳴っていたのに、これまではノイズで汚してしまっていたのだと気付かされました。
スイトナー指揮ドレスデン・シュターツカペレの演奏でモーツァルトの交響曲第29番を聴いてみました。
この録音会場はホールの残響時間が長いことで有名ですが、オーケストラの各楽器の音色がちょっと他のオーケストラとは一味違う感じがします。
重厚さと繊細さを兼ね備えたような感じで、弦楽器の音に独特の渋さのようなものが感じられます。
バイオリンの弱音部での音の柔らかさが一段と良くなっていて、コンサートホールでもここまでの美音はなかなか聞けないのではと思わせられます。
この曲では、ホルンが結構聞かせるところがあるのですが、ステージの奥のほうでホルンが吹いているのが良く分かります。
また、弦楽器と管楽器の音が分離しながら、しっかりハモっていて、とにかく美しい音がたまりません。何回も聴き返したくなる音です。
ティンパニの皮の音の特徴も良く表現されていて、安っぽいプラスチック製のような音ではなく、渋くて高級感がある本革のような音で鳴っているのが良く聞き取れるようになりました。
次に、オーマンディ指揮フィラデルフィア・オーケストラの演奏でお気に入りのショスタコーヴィチの交響曲第5番を聴いてみました。
第2楽章冒頭のコントラバスとチェロの音に厚みが感じられ、お腹にずしッとくる響きがライブ感抜群です。
それに続くホルンの咆哮も力強い音なのですが、とにかく美しく空間に広がってコンサートホールで鳴っているような感じがします。
木管楽器もそれぞれの楽器の位置関係がわかるようなクリアさで、各奏者の演奏もめちゃくちゃ上手いので響きが美しく、本物の楽器の音がします。
しかし、このオーケストラで一番気に入っているのは、バイオリンをはじめとする弦楽器セクションの音です。
力強い音から弱音まで、なめらかで艶があり、特にバイオリンでは生演奏で聴けるような松ヤニが飛び散る感じの音まで良く録音されていたことが聞き取れるようになり、何回も聴き返してしまうほどです。
生演奏では1回しか聞けないのですが、録音では気に入ったところを何回も繰り返して聴けるというありがたみを強く感じてしまいました。
LANターミネーターの効果まとめ
ルーターの空きLAN端子にLANターミネーターを接続して、音質への効果を確認してみました。
すでにUSBターミネーターでノイズ対策してある状態に追加で対策しましたので、正直なところあまり効果を期待していなかったのですが、結果は予想に反して効果抜群でした。
USBと同じくLANも空き端子からはかなりのノイズを放出していて、オーディオ機器の音楽信号に悪影響を及ぼしていることがよくわかる結果となりました。
今回試したLANターミネーターは1個1万円以下ですが、空きLAN端子には全て接続したほうが良さそうです。
空きLAN端子をそのままにして聴いている方は、LANターミネーターを試してみてはいかがでしょうか。