デジタルオーディオ再生のためにパソコンやネットワークトランスポートとDAコンバーターとの間をUSB(Universal Serial Bus)で接続する方式が普及しているのですが、USB接続ケーブルを通じて電源ノイズも一緒に伝送されてしまい、音質を落とす原因の一つとなっています。
このUSB接続ケーブルでのノイズ対策として、USBアイソレーターを間に接続する方法で大きな効果が得られることを別の記事で紹介しました。
もう一つUSB接続機器のノイズが音響機器の信号を汚染する原因となるのが、未使用のUSB端子から電波として放出されるノイズの影響です。
今回は、このUSB空き端子のノイズ対策として用いられるUSBターミネーターを使用して、効果を確認しましたので、紹介していきます。
USBターミネーターがノイズを減らせる理由を考察!
USBターミネーターがノイズを減らせる理由は以下の2つです。
・USBの信号回路を良質な抵抗で終端(ターミネート)し、ノイズ発生を抑える
・USBの電源回路にフィルター回路を搭載してノイズを吸収、減衰させる
パソコンやオーディオ機器のUSB端子は、電源がONの状態では常に動作状態になっていますので、何も接続していないオープン状態ではノイズを放出し、オーディオ機器の音質に悪影響を与えます。
そのため、信号回路を抵抗で終端(ターミネート)することで、ノイズの発生を抑えます。
また、電源回路にはフィルターを入れることで、電源ラインに含まれるリップルノイズや高周波ノイズを吸収し、USB電源をクリーンにします。
USBターミネーターを選定してみた!
市販されているUSBターミネーターの中から、自分が使えそうと思えるものをテストしたいので、以下のような条件に当てはまるものを選ぶことにしました。
(1)USBターミネーターが空きUSB端子の周辺のコネクタなどと干渉しないこと
(2)USB空き端子箇所が増えていくことを想定して、価格がなるべく安いもの
例えば、すぐ隣にUSBコネクタや他のコネクタが挿してある場合には、USBターミネーターの寸法が大きいと干渉してしまうので、外形寸法を確認する必要があります。
メーカー資料で仕様を確認し、JS PC AudioのUTX1、PanasonicのSH-UPX01、ACOUSTIC REVIVEの RUT-1は、オーディオ用の高品質部品を使っているので良さそうと考えました。
価格は
・UTX1: 8,360円(税込)
・SH-UPX01: 32,868円(税込)
・RUT-1: 21,780円(税込)
と少し差があります。
手持ちの機器のUSB空き端子の数をざっと数えてみると、ネットワークトランスポート、NASだけでも4~5カ所ありますので、上記3つのUSBターミネーターの中から最も低コストのJS PC AudioのUTX1を試してみることにしました。
UTX1
JSPC AudioのUTX1を試してみた!
USBターミネーターUTX1を以下の条件でテストしてみました。
・ネットワークトランスポートsMS-200の空きUSB端子に接続
・CDからリッピングしたFLAC(44.1kHz,16bit)ファイルを再生
ネットワークトランスポートsMS-200のUSB空き端子のノイズ対策として、USBターミネーターUTX1を試してみることにしました。
sMS-200
現在使用しているネットワークトランスポートsMS-200には3つのUSB Aタイプコネクタ端子があります。
そのうちの1つはオーディオ出力専用です。DACにUSB接続する場合にはこのコネクタとDACのUSB入力コネクタをUSBケーブルで接続します。
USBケーブルもオーディオ用のものが多種類販売されていますが、ノイズ対策がしっかりされているタイプを選びました。
他の2つのUSBコネクタはデータ入出力用で、USBハードディスクやUSBメモリと接続することが想定されています。
この2つのUSBコネクタは使用していないので、空き端子となっており、ノイズを拾ったり、ノイズをまき散らしたりするので、ノイズ対策としてUSBターミネータUTX1を挿入して効果を確認してみました。
この2つのUSBコネクタは上下に隣接して配置されており、2個のUTX1をそのまま挿入しようとすると、無理やり挿入すれば入らないことはないですが、コネクタと基板にストレスがかかりそうなので、無理と判断しました。
そこで、1個のUTX1はそのまま空きUSBコネクタに刺し、もう1個はUSB中継ケーブルを使って接続してみました。
USB中継ケーブルとして、あまり長い線長のものは避けたいので、10cm~15cm程度のものを選びました。具体的には、Kakomui USB3.0 L型ケーブル X000JR31MNで、アマゾンで購入しました。
【視聴用音源】
視聴用の音源としては、CDからリッピングしたFLACファイルをいくつか用いました。
・ピアノ:
アレクシス・ワイセンベルク The Champagne Pianist
Beethoven Piano Sonata No.14
・オーケストラ:
オーマンディ フィラデルフィア管弦楽団/チャイコフスキー くるみ割り人形
ショルティ シカゴ交響楽団/ マーラー 交響曲7番
など
【比較視聴結果】
(1) sMS-200の空き端子(下側)に1個のUTX1を挿入した状態での試聴
全体的にノイズが減って、S/Nが良くなったことがはっきりわかります。
UTX1を挿入しない状態に比べてアンプの音量レベルを2レベル(40→38)下げて音量的にちょうどよい感じです。
楽器の音の質感がより自然になりました。
バイオリンの音は一段と滑らかになります。
オーケストラの各楽器がよりクリアに聞こえ、音の分離と重なり合いが美しいです。
余計な雑音が減ったおかげで、ソロ楽器の音像が引き締まって、楽器周辺の空間がより感じられるようになりました。
UTX1挿入前はあまり聞こえなかったハープの音がはっきり聞こえるようになりました。
ピアノも1音1音がクリアになり、強奏時にペダルを踏んだときでも濁りが少なく感じられます。
(2) sMS-200の空きUSB端子(下側)に1個のUTX1を挿入し、上側の空きUSB端子に中継ケーブルを介してもう1個のUTX1を挿入した状態での試聴
ワイセンベルクのピアノの音にクリアさに加えて柔らかさが出てきたように感じます。
オーマンディのくるみ割り人形では、UTX1が1個のときに比べて、さらに以下のような変化が感じられました。
・一段とS/Nが良くなった。
・バイオリンの音がさらに滑らかになった。
・全体に音に厚みが出てきます。
・木管楽器(オーボエ、クラリネット等)の質感がさらに自然になった。
・中低音がよりしっかり出ているように感じられる。
ショルティのマーラー 交響曲第7番については、以下のような変化が感じられました。
・オーケストラの音にさらに厚みが出て、弦楽器は大勢で弾いている感じがよりリアルに。
・ホールの響きがより一層クリアになります。
・各楽器音のディテールがよりはっきりと聞こえます。
・ティンパニーをバチで叩いたときの皮の振動具合がより生々しく聞こえます。
・バイオリンの音が滑らかで、スカッと伸びきった感じがすばらしく、気持ち良い。
USBターミネーターの効果まとめ
結論から言いますと、USBターミネーターによる音質改善効果は抜群で、UTX1を外した元の状態では聴く気がしなくなるほど音質が良くなりました。
UTX1を1個だけ接続した場合でも音質はかなり改善されますが、2個接続した場合にはさらに良くなります。
ということで、UTX1を2個接続した状態で使っていくことにしました。
2万円弱のコストで、ここまで音が良くなるとは正直驚きました。
USB空きポートがある場合には、USBターミネーターを入れてみるというのが定跡かもしれません。